土漠の花 月村了衛

ソマリアで後方支援活動をしていた自衛隊が

現地人女性を保護したことで

地元の民族間紛争に巻き込まれ

壮絶な死闘をくりひろげる話です。

冒頭から問答無用の攻撃を受け

車両も武器も失い

まさに息つく間もなく、考える暇もなく、執拗に追いたてられ

敵から武器を奪い、車両を奪い応戦しながら、

基地までの70キロを逃げる自衛隊と現地女性の話です。

評判どうりのスピード感で、一気読みしました。

そこそ楽しめましたが

しかし、僕には引っかかる点も多く、

今一つ心に響くものがなかったという印象です。

引っかかる点とは

冒頭、問答無用の奇襲攻撃を受け

いきなり何人かの隊員が命を落とします。

奇襲を生き残った者も皆捕まり

まさに皆殺しにされそうになった時

立ち小便で離れた場所にいた隊員が敵兵を撃ちます。

これによって7人が逃げ伸びます。

最初に敵兵を殺した隊員は

自衛隊員である自分が人を殺したと少し悩みます。

しかし、お前が撃たなければ俺たちはみんな死んでいた

自分たちの命を守るためには相手を殺してもやむおえない

彼の攻撃は正しかった

と、他の隊員の意見はあっさりまとまり、

後はほとんどそのことについて葛藤も描かれず

以降は無遠慮な殺し合いをくりひろげる事となるわけです。

周辺事態法に伴う戦争開始のいちメカニズムとして、

アンチテーゼとして

あえてそう描いているのかもしれませんが

現行の憲法九条にある戦争放棄とは

「やられてもやり返さない事」と僕は解釈していますが

少なくとも

「専守防衛」

の基本理念は今も自衛隊に根付いていると信じたいし

その葛藤はもう少し描いてほしかったのです。

一人狙撃の名手だった(平時の狙撃訓練の成績で)隊員がいるのですが、

この隊員だけ、どうしても敵を撃てないんです。

彼には娘がいて、

「血に染まった手で娘を抱けないから撃てない」

といいます。

唯一まともな事を言っていると思ったのですが

他の隊員たちは一切とりあわず

この人が撃てない事で仲間が死に

撃てないことが精神異常(つかえないやつ)とされるんです。

後半は立ち直り狙撃手としてバタバタ敵を殺し始めると

「成長」したと描かれるのですが・・。

追手の武装勢力があまりにも完全悪に描かれているのも引っかかります。

実際、のモデルとなっている勢力があるのでしょう。

取材をしてそう描いているのでしょうしから、

素人の僕が簡単に批判できることではありませんが、

どんな悪のテロ組織でも兵隊の一人一人には家族もいるでしょうし

悪なりの主義思想や目的はあるのでしょう

目の前の生物は無条件に皆殺しにするゾンビのような描かれ方をしているのは

引っかかります。

自衛隊の後半の無遠慮な殺戮を正当化するためにそうしているように感じ

もはや「処理」とかいいはじめ、

数だけで言えば自衛隊のほうが圧倒的に殺している

のも気になります

気持ちを切り替え

スタローン映画さながらのアクションエンターテーメント

と割りきって読もうとしても、

いちいち隊員たちの過去の身の上話が織り込まれる感じが

今度はどうもクールじゃないし

主人公の友永が内なる弱さと葛藤している感じは

エヴァンゲリオンのシンジを思い出し

僕はシンジ大嫌いなんで引っかかります。

シンジは子供だからまだしも、いい大人のこういう感じはイライラします。

これは完全に好みですが・・・。

ラストの重要なオチのネタばれになるので

細かく書けませんが

読んだ人ならわかるんじゃないでしょうかこれ

基地に帰った友永が上官に「ある事」を言われ

納得できないと食ってかかるんですが

「友永さん、何言ってるんですか。そんなの当然ですよ」

と心の中でツッコミいれました。

机上で平和主義を唱えるのは簡単です

実際、緊張地帯に派兵される自衛隊を批判する気はさらさらありません

周辺事態法も今の国際情勢を考えれば、まあ賛成です

この作品のようなことが実際に起きても何ら不思議ではないですし

もうすでに起きているかもしれません(隠ぺいされて)

これが実話だとしても、作中の彼ら自衛隊の行動を批判する気はありません

僕があの隊の中にいたとしたら

津久田隊員のように撃てない、撃たないでいたいです。

それで仲間が死んだとしても

撃たなければ自分が死ぬとしても

本当にそういう行動が出来るかは分かりません

実際は小便もらしながら銃乱射したあげく殺されるのがオチ

かもしれませんが

それでも、平時に、机上でも

そういう理想を持っていなければ絶対にできないわけですから。

仕方ないにせよもう少し殺さない方法を模索したり

葛藤したりしてほしかったのです

そんなわけで評価星2点(5点満点)

とにかく怒涛の展開でそこそこに楽しめましたが

戦争をあつかった話としてはいささか短絡的で

エンターテーメントにしては浪花節すぎ

余談ですが

映画「スリーキングス」

主演 ジョージクルーニー

を思い出しました

湾岸戦争終結直後のイラクを舞台に不良米兵が

私欲のために米軍の旗をふりかざし

金塊を強奪する話です。

帰りに現地の村である母子が武装勢力に処刑されている場面に遭遇。

一度は無視して通り過ぎようとするのですが、葛藤の末、武装勢力を攻撃。

以降この本と同じように現地武装勢力との戦闘に巻き込まれていく話ですが

こちらのほうがエンターテーメントとしても面白いし

民族間の紛争に介入していいのかと常に葛藤しながら行動する感じが

政治的、社会的な作品としても深みもありました。

目の前に明らかな悪が存在してもこれに他国軍が制裁は出来ない。

ましてや現場の1兵士の善悪の判断でしてはならない。

というのが常にテーマとしてあったのに

アメリカの不良兵士の話でさえ・・・。

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