楽園のカンバス 原田マハ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター補佐、ティム・ブラウンはスイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのはルソーの名画「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋鑑定した者にこの絵を譲ると告げる。ただしX線調査などはせず、ある古書を読むことによって判断せよというものだった。7章からなる古書を1日1章づつ読み7日目に講評をして決めると。ライバルは日本人研究者、早川織絵。

 

ジャンルで言えばミステリー小説ということになるのでしょうか

美術ミステリー。

ある1枚の絵についての真贋の謎を解く話ですから

その絵の持ち主の富豪は都市伝説的謎のベールに包まれた名画コレクターだったり、

その絵を手に入れようとつけ狙う謎の勢力が接触してきたり、殺人事件こそ起きないけれど、スリリングな極上ミステリーと言えるでしょう。

殺人事件が起きない

という事がまず僕にとっては大きな価値ある作品です。

僕は殺人事件ミステリーが極端に嫌いです。

本に限らず、映画、ドラマのジャンルにおいても殺人事件ミステリーは生まれてから

これまでまともに見たことがないといっても、過言ではありません。

これはもう生まれつきの体質といっていいでしょう。

後付け的に理由を考えるなら

謎解きゲームのために人を殺すのが(作家目線で考えて)とても

不謹慎な気がするからです

ましてや女子大生が温泉につかりながら楽しげに殺人事件を推理する話なんて

聞いただけで受け付けません。

 そういう観点から本作は

殺人事件のない数少ない気品に満ちたミステリー小説だと思います。

恋愛ドラマとしても、とても気品にみちています

ルソーという画家の極めて限定的な専門研究者であるティムと織絵。

途中の見解を話し合いたいのは山々

しかし大っぴらに手の内を明かすわけにはいかない

立場は真贋鑑定のライバルですから。

スイス、バーゼルの夜の街並みを散歩したり

動物園で気晴らししたりしながら、ぽつぽつと話し合う中で

研究者として、人として通じるものがある。

直接的な恋愛的行動はありませんが

それが余計にエロティックでもあり

大人の静かな恋愛が素敵に描かれていると思います。

こういう感じとても好きです。

また古書に描かれている話はルソーと「夢」に描かれている裸婦のモデルである

ヤドヴィガの話。

はじめは「謎の古書」と言う割には子供の絵本のような語りくちに

?と違和感を感じましたが

こちらもパリの下町を舞台に人妻ヤドヴィガと老人ルソーの微妙な関係がまさに「夢」のごとく叙情感たっぷりに描かれ、後半はその絵本的で稚拙な物語にすっかり引き込まれ

最後は胸を打たれました。

というわけで私的評価 星3.5点(5点満点)

人それぞれ本に求めるものは違うと思いますが

僕はテーマ性というか新しい価値観、人生観を揺るがす何か

を求めるところがあり

その点はあまり感じるものがなく、若干物足りないところでした。

殺人事件ミステリー好きの方々へ

気を悪くされたら申し訳ありませんでした

好みは人それぞれということ

重々承知の上で

せっかくこういうグループなので

好みを語らせていただきました。

昨今のエンターテーメント業界、殺人ミステリーの席巻が目立つことに

アンチ派としてちょっと物申したい気持ちもあって・・

まあ、弱小派閥の負け犬の遠吠えと思ってください。

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